特殊加工した蓮の葉やインド菩提樹の葉を用いて作品をつくるボタニーペインティングは、自宅でも気軽に楽しめ、最近SNSでも注目を集めています。
ボタニーペインティング講座主催・杉本光俊(すぎもと・みつとし)さんは、ボタニーペインティングの考案者であり7年前から全国各地でワークショップを開催。
また自宅に画材が届き、好きな時に動画を見ながら楽しめる通信講座も人気で、日本中にこのアートの素晴らしさを広めています。
そしてこの度、入門書ともいえる『ボタニーペインティングBOOK』が、11月に玄文社より出版されました。
そこで今回はボタニーペインティングの伝道師、杉本さんに、その魅力について熱く語っていただきました。
アートに興味がある方だけでなく、「日常が忙しく心が安らぐ暇がない」「何か新しことを始めたい」「子どもと一緒にできることがしたい」と思っている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です!
【独自取材】著者・杉本さんがボタニーペインティングを広めたきっかけ
インタビュアー(以下、イ):ボタニーペインティングは世界でも珍しいアートだと思うのですが、杉本さんが「ボタニーペインティングを日本に広めよう」と思ったきっかけは何だったのでしょうか?
杉本さん(以下、杉本):直接のきっかけは、東南アジアに旅行した時、現地で蓮の葉を使った民芸品をたくさん目にしたことです。
ベトナムをはじめ東南アジアの国では家具、ノート、ティッシュボックスや笠といった日常で使うあらゆるものに蓮の葉が貼られていました。
それを見た時、私の中でパズルのピースがピタリとはまったんです。
実は私は親戚にお寺関係者がいて、幼い頃から蓮の葉が身近にありました。
またデザイナーを目指していた20代の頃、紅葉した柿の葉が地面に散っている様子に感動し、それを漆で仕上げた作品を制作したことがあります。
仏教にゆかりのある蓮の葉とアート…蓮の葉を使うことで何か新しい表現ができる、そう感じたのがボタニーペインティングの始まりです。
最初は蓮の葉をあしらった民芸品に色を塗るというワークショップからスタートしたのですが、その後「もっと自由にオリジナルの作品を作ってもらいたい」という思いが強くなっていきました。
そこで現在のボタニーペインティングの形、“自分で蓮の葉を貼ることから作品作りが始まる”というスタイルを確立するに至りました。
ボタニーペインティングの魅力【1】
世界で唯一の作品で日常を彩る、ボタニーペインティングとは
ボタニーペインティングは特殊加工を施した蓮の葉やインド菩提樹の葉を使って作品をつくるアートです。
和紙や木製のパネルに葉を好きなように配置し、その上から思い思いの色を塗っていきます。
天然の葉を使用しているため形や葉脈の模様が1つひとつ異なり、世界で唯一の作品を生み出せるのが特徴です。
作った作品はそのままお部屋に飾ることができ、日常に彩を添えてくれます。
せわしない日常において、天然の葉やアートに触れる時間は日々の疲れを癒してくれます。
しかし気軽に出向いてアートに触れる機会って、普段なかなかないものですよね。
ボタニーペインティングはインテリアとしてだけでなく、手のひらサイズでアクセサリーにもなるものから、壁一面を覆う大きなものまで、型に囚われない作品づくりができる点も多くの人を魅了する理由です。
単にアートに触れるだけじゃない。天然の葉に癒され、自分のオリジナルアートで、暮らしを彩ることが出来る。
それが、ボタニーペインティングの魅力なのです。
ボタニーペインティングの魅力【2】
「正解がない」ゆえに親しみやすい
イ:東南アジアで蓮の葉を使った民芸品に出会ったことが、ボタニーペインティングの始まりだったんですね。
ボタニーペインティングの魅力ってどんなところにあるんでしょうか?
杉本:ボタニーペインティングの良さはたくさんあるのですが、まず第一に「正解がない」ことがこのアートの良いところです。
みなさん学校で美術や図工の授業を受けてきたと思います。
その中で「もっとこうした方が良いよ」「ここはその色じゃないんじゃないかな」などと先生に言われた経験はありませんか?
日本の美術教育は学校の方針の中で行われています。
その場合、作品を否定される、他の子と点数を比べられるということがあるかもしれません。何かを基準に批評を受けることは劣等感を持つ動機になります。
そうすると大人になって絵を描きたい、何か作りたいと思っても、過去の経験から「自分には才能がない」「上手に描けない」と諦めてしまうんですね。
一方ボタニーペインティングは蓮の葉に色を塗るのが基本のアートですから、上手いも下手もありません。
好きなように葉を配置して好みの色を塗る…お子さんから大人まで、誰でも取り組めて非常にハードルが低いアートワークとなっています。
また私たちの事務所が開催しているワークショップや通信講座では、参加者さんの作品に良し悪しや点数をつけることは一切しません。
講師はみなさんが作る過程、作品に込める思いをすべて肯定し、“本当に作りたいものを作るお手伝い”に徹しているのです。
もちろん技術的な部分についても助言はしますが、それは後回し。
あくまで参加者さん自身が作りたい・表現したいものを制約しないよう、のびのび作品づくりに取り組んでもらうことを目指しています。
年齢や経験の有無に関わらず、誰もがアーティストになれる。
ボタニーペインティングはそんな親しみやすいアートなんです。
ボタニーペインティングの魅力【3】
ボタニーペインティングに秘められた“無”の力
イ:本に載っているボタニーペインティングの講師の方々が、様々な体験談をお話されています。皆さんどのような体験を得ているのでしょうか?
杉本:ボタニーペインティングは自由に作品を作れるだけでなく、手を動かし制作している間は自分自身を見つめ直す時間です。
ヨガの瞑想に非常に近い感覚です。
ワークショップに参加されたり、通信講座をご受講される方々は、その「“無”の時間」を楽しんでくださっています。
蓮の葉やインド菩提樹の葉といった自然のものに触れながら、難しいことを考えずにまず手を動かし好きな色を塗ることに集中する…。
そうすると作品をつくりながら、頭の中が空っぽの状態になりやすいのです。
人が幸せを感じる瞬間は色々ありますが、”無”の状態になることも幸福度が高いと言われていて、自分の内面をアウトプットするのに最適なコンディションとも言えます。
ボタニーペインティングに触れることで、日常ではなかなか得られない幸せを感じていただけると思っています。
普段なかなか見えない“本来の自分”と向き合い、それを蓮の葉に載せる色で表現し、外に出していく…。
悲しい時や感動した出来事を誰かに話すとスッキリするように、ボタニーペインティングは制作過程を通して自分の気持ちの整理を行うことができるんですよ。
ボタニーペインティングの魅力【4】
ボタニーペインティングに想いを重ねる
ボタニーペインティングは蓮やインド菩提樹の葉をレイアウトすることから始めますが、葉の1つひとつとご家族を重ねて思い描く方もいらっしゃいます。
これは旦那さん、これは自分…と家族を1つの作品にまとめることで、大切な人と密な時間を過ごした気持ちになれるんです。
ご両親を亡くされて間もなくワークショップに参加された方は、蓮の葉にご両親との思い出を重ね涙を流されていました。
お子さんと一緒にワークショップに参加された親御さんは、講師が子どもの制作過程に意見を挟まない様子を見て、教育的なヒントを得られたと言ってくださったことがあります。
実際ワークショップや通信講座の感想を聞くと、「何となく気持ちが軽くなった」「スッキリした」といったお声をたくさんいただきますよ。
ボタニーペインティングで得られる変化
イ:ボタニーペインティングを体験すれば、何か日常で嬉しい変化も期待できそうですね。
杉本:そうですね。確かに「ボタニーペインティングと出会ってから少しずつ日常が変化した」と仰る方は多いですよ。
例えばワークショップで葉の温もりに触れ自己表現を続けることで、自己肯定感が改善されていった方。
制作過程の”無”を経ることで、ワークショップ後に悩んでいたことに道を見いだせたという方。
鬱々とした気持ちを忘れるくらい没頭して、気づけばそのまま講師を目指していたという方。
お店に作品を飾ることで自然とお客さんとの会話が弾み、ご自身で教室を開き生徒さんが集まるようになった方…。
日常の中にボタニーペインティングが加わることで、いつもと違う何かが生まれる。
さらに作品づくりに定期的に取り組むことで、その変化は少しずつ大きくなっていきます。
1回の体験で劇的な変化を得るのは難しいかも知れませんが、生活にアートが入り込むことで”日常がちょっと明るくなるプラスの変化”を徐々に感じていっていただけるのではないでしょうか。
私たちが掲げる「LIFE is ART」を、ボタニーペインティングを通して多くの人に体感していただきたいです。
すべてを受け入れられる自由なアート
イ:ボタニーペインティングに興味を持たれた方に、伝えたいメッセージはありますか。
杉本:「日常にアートを取り入れるなんてハードルが高そう…」そう思われる方も多いと思いますが、ボタニーペインティングはどこまでも自由に表現していいアートです。
どんな風に葉をレイアウトしても、何色を使っても、それはあなたの作品の“個性”。
自分の作品を誰かに否定されたり、出来上がったものに点数をつけられることはありません。
ですからぜひたくさんの方に、気軽にボタニーペインティングを始めてほしいと思っています。
とはいえ急にワークショップに申込むのは気が引けるという方には、まずは『ボタニーペインティングBOOK』でやり方や実際の作品を見ていただきたいです。
お子さんと一緒にご家族で楽しいひと時を過ごしていただける、子ども向けの教室も全国各地で開催しています。
ちなみに私たちが開催しているワークショップに参加されたり、通信講座をご自宅で受講される方の約9割は、ボタニーペインティングの初心者です。
初めてでも大丈夫。
みんなで一緒にボタニーペインティングに触れて、ぜひ“本来の自分”と向き合う喜びを体感してみてください!
ボタニーペインティング講師の声
ボタニーペインティングと出会い「この魅力を多くの人に知ってもらいたい!」と思ったら、講師の資格を取ることも可能です。
現在ボタニーペインティングの講師として活動されている方は、全国に400名ほどいらっしゃいます。
ここではボタニーペインティングの魅力を発信している講師たちの声を、『ボタニーペインティングBOOK』より一部抜粋して紹介します。
アトリエIRONO-Ha
湊桃子さん「誰もがアーティストに」
ボタニーペインティングは、学校の授業とは違って上手く描かなければとか、先生の目や点数が気になることもない、自由なアートです。・・・ボタニーペインティングは子どもから年配の方まで、誰もがアーティストになれるアートです。
ヨガスクール・ボタニーペインティング講師
古谷理絵さん「自らを解放する気持ちよさ」
ヨガとボタニーペインティングはどちらもボ党していく感覚があり、瞑想的な時間です。自らが本来もっているものを自覚し、感じていることを承認してあげる。つまり自分の内面、内なる声との対話なんですね。・・・自らにはめていた枠を取り払って、自らを解放する気持ちよさを、ボタニーペインティングを通してぜひ体感してほしいです。
ボタニーペインティング作家・講師
佐々木麻衣さん「コンプレックスも強みに変えられるアート」
ボタニーペインティングをやってみて、作っているときの自分の心が作品に現れると感じました。モヤモヤしていたり、ネガティブな気持ちでいると、思ったのと違う色が出たりします。でもそれは、いつもとは違ったものが見えるということ。コンプレックスに思っていたものが、強みに変わることもある。このアートをやっていて良かったなと思います。
ショップSUN SHINE SCENTS
YOKO KOJIMAさん「色彩と自然のぬくもりに癒されて」
ボタニーペインティングに惹かれたのはやはり色を使うところ。そして天然の植物を使っているところです。普段から散歩したり、旅行で滝を見に行ったりと、自然に触れ合う時間が癒しになっているので、これは好きなものが重なっているアートだと思い、直感でワークショップへの参加を決めました。
初めてボタニーペインティングを体験した時は、蓮やインド菩提樹の葉に触れた感触や匂いにとても癒されました。
ブロッサムアートのAtelier Jasmine
元松尚美さん「ボタニーペインティングは癒しの時間」
ボタニーペインティングの良さは、必ず作品に満足できるという点。大人になると絵の具を使う機会がほとんどありませんから、それだけで非日常が味わえる特別な体験になるんですね。それに、色にはその時の自分の心が現れます。手を動かす時間も、心のモヤモヤを解消してくれる癒しの時間になるんです。
少しでも気になった方は、本書でボタニーペインティングの世界を覗いてみてください!
玄文社より11月に販売中の、杉本光俊(すぎもと・みつとし)著『ボタニーペインティングBOOK』は、必要な道具や手順、作品例などが詳しく記され、眺めているだけで夢中になってしまうほど素敵な作品と講師陣の体験談が掲載されています。
新しい趣味に出会いたい方だけでなく、「最近モヤモヤした気持ちが晴れない」「アートとは無縁で自信がない」という方にも本書はおすすめです。
ぜひ全国の書店でご予約・ご購入してみてください。